大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)23号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決は、本願発明と第一引用例記載のものとの一致点及び相違点の認定を誤り、したがつて、本願発明と第一引用例及び第二引用例との対比における判断を誤つた違法があるといわざるをえない。これを詳説すれば、次のとおりである。

第一引用例記載のものが、紙製管状容器の密封効果を奏するため、不滲透材を裏張りした紙のストリップを、その管端において一方の端縁を折り返して不滲透材を外側に表わすとともに、他方の端縁を右折返し材に重ね合わせて、不滲透材相互の間に膜対膜の関係を保たせて閉じた構成をとるものであることは、原告の認めて争わないところである。

一方、本願発明にあつては、管状容器の密封効果を、次のような構成をとることによつて達成しているものであることを認めることができる。すなわち、本願は、管状容器の胴体部分を、胴体材料層発明のものと表面層とを各別に螺旋状に巻いて形成するのであるが、胴体材料層は、実質的に強固な管状容器を形成する必要上、相当の厚みを有するものであつて、その一方の側部端縁が他方の巻回の側部端縁と突き合わされて、互いに重なり合わないようにされ、したがつて、その部分に重なり合いによるかさばりの生ずることのない管状層を形成する。そして、流体不滲透膜層(たとえば、アルミニウム箔)及び紙の層から成る表面層は、これと別個に形成される右胴体材料層が相当の厚みを有することと次に述べる表面層の形成手段とに照らし、かなり薄いものであり(本願明細書中、実施例の記載によれば、0.00035吋ないし0.0001吋程度の厚さのものが予定されている。)、これを容器の内部表面に用いる場合、その紙の層は前記胴体材料層に接し、不滲透膜が内側面を形成するようにし、その一方の縁部分を不滲透膜を外側にして折り返し、この折り返された縁部分の不滲透膜は、これと隣接する表面層回旋の隣り合つた縁部分の不滲透膜と重なり合い、接着剤で接着されて、相互に膜対膜の関係を保つようにされ、このように、表面層の隣り合つた回旋間に形成された螺旋状の継目は、表面層の紙の層の側部端縁をいずれも右不滲透膜層と前記胴体材料層との間に閉じ込める関係となり、容器の内部表面は、不滲透膜でおおわれて、内容物が外部に滲み出るようなことはない。以上のとおり認めることができ、他に右認定を左右すべき証拠はない。被告は、表面層の厚さについては、本願発明の要旨に限定がない旨主張するが、右認定のとおり、表面層はアルミ箔を用いる等かなり薄いものを予定していることが、本願発明の構成自体に徴し、かつ明細書全体の記載を通じて、明らかであり、厚いものをも含めて論ずることは相当でない。

右認定の事実によると、第一引用例記載のものは、紙に不滲透材を裏張りした胴体材料層の一方の端縁をそのまま折り返して、他方の端縁と重ね合わせるのであるから、胴体材料層の厚みのため、重ね合わされた継目の部分がかさばつて厚くなり、そのままでは密封効果を挙げることができないこと、したがつて、また、右同様の胴体材料を螺旋状に巻くときは、継目がかさばつて隙間ができやすく、密封効果をあげることがとうてい困難なものであることは、経験則上明らかなところである。これに反し、本願発明のものは、管状容器の胴体部分を、胴体材料層と薄い表面層との二層に分離して各別に巻き、胴体材料層は縁部分を重ね合わせることなく、表面層のみ端縁の折返し部分においてのみ重ね合わせて不滲透膜層を形成しているのであつて、表面層はかなり薄いものが予定されているのであるから、右重ね合わせによつて継目の部分がかさばることなく螺旋状の巻きつけが可能であり、かつ、胴体材料層の継目にかさばりがないことから、全体としてなめらかに巻きつけられ、容易に密封効果をあげうるものであることが、経験則上明らかであるということができる。この点について、被告は、胴体材料層の継目にかさばりがないことの効果は本願明細書に記載がないから、これを根拠に審決の認定を左右するのは不当である旨主張するが、明細書に記載を欠くことを理由に、構成自体により経験則上分明な効果までも顧慮すべきでないとすることは、相当でない。

右のとおり、本願発明と第一引用例記載のものとは、折返し部分とこれに重ね合わされた不滲透膜相互の関係だけをみると、膜対膜の関係を形成していることは明らかであるけれども、容器の密封に関する技術上の構成を全く異にするものであり、また、その効果の点においても差異があるものといなければならない。本件審決は、この点に関する認定を誤つたものといわざるをえない。被告は、螺旋巻容器の胴体部分を一層構成とするか二層構成とするかは単なる設計変更の問題にすぎない旨主張するが、二層構成において、前認定のような本願発明の構造のものとすることは、当然に着想されうるところとはいえないばかりでなく、これにより前認定のような特段の効果を奏することができるものであるから、本願発明をもつて、第一引用例と対比して、単なる設計変更の範疇に入るものとすることはできない。

そして、第二引用例に、紙を螺旋状に巻いて容器胴をつくることが記載されている……が、これと前記第一引用例記載の技術とを綜合考察しても、なお、前記のような、螺旋管形成の際における継目のかさばりの欠点を解消して、密封効果を完全にするに足りないものがあり、したがつて、第一引用例及び第二引用例記載のものから、前記のような本願発明の管状容器を容易に想到しうるものということはできないものである。本件審決は、前記認定を誤つたことにより、右の点における判断をも誤つたものといわざるをえない。

(むすび)

三 以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がある。よつて、これを認容する。 (服部高顕 石沢健 滝川叡一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!